パライバトルマリンとの出会い
パライバトルマリンという石は私にとって夢の石でした。
初めてその石を見た時、あまりの美しさに大袈裟ではなく息が止まりました。
突き抜けたブルーグリーン。
どこまでも天高く昇るようなエネルギーの石。
ただただ見惚れていた時間はいったいどれくらいあったことでしょう。
当時の私は宝石の世界でまだまだ駆け出しの頃。
この石の存在も知らなくて、「これは一体なんていう石なんですか?」と
お店の人に聞いたところ「パライバトルマリンです」と教えてもらいました。
ブラジルのパライバ州というところでしか採れないからそう呼ばれていたそうですが
現在はモザンビークなどで採れるものもパライバと呼ばれます。
値段も突き抜けていたパライバ
値段を聞いてまた驚いた。
グレードにもよりますがダイヤモンドよりも高い石。
色石でこんな高いものがあるのか・・・と驚いたものです。
高い・・・。でも人工でつくった途端に安っぽくなるこの色は、天然だからこそ価値がある。
パライバトルマリンは銅のせいで稀有なエレクトリックブルーになります。
その配合が決め手となり、パライバトルマリンと鑑別されるわけです。
しかし、ブルーからグリーンのトルマリンが大量に鑑別に出されても、そのほとんどが
パライバトルマリンとは呼ばれないのです。
似合わない=悪だと改めて思い知らされた石
すっかりこの石に魅せられてしまった私はどうしてもこれを手に入れたくなりました。
けれど、あろうことかどのパライバを手に乗せても全然似合わないのです。
あんなに美しい石の色はくすみ、石の輝きもふっと消えてしまう。
そんなはずはない、とパライバに出会うたびに私の手に乗せてみるのですが
一つとして私に似合うパライバトルマリンには出会えませんでした。
覚悟を決めて手に入れるつもりだったのにこれはとても悲しい出来事です。
けれど、手に乗せて石が輝かないならばつけない。
これは私の矜持でもあり、固いポリシーでもあります。
それでも美しいパライバへの思慕が強かった私はなかなか諦めがつかず、
泣く泣く断念するまでに数年を要しました。
パライバトルマリンに抱いた夢
2021年に友人と株式会社GEOMETRYというジュエリーの会社を設立した時、
「いつかパライバを扱えるようになりたい」という野望を掲げました。
非常に高価な石であり、良質なパライバを手に入れるのはとても難しい。
この石を扱えるようになったら一人前なんじゃないか。いつかこの石を扱うほどの宝石商になりたい
と願ったんですね。
それには信用や実績がないといけないと思っていましたから、数年の時間を要するだろうと見越していました。
しかし。
GEOMETRYの設立記念パーティーが同年7月に開催され、なんとそこでパライバが売れたんです。
これは私にとって驚きでもありとても嬉しい出来事でした。
そして思った以上に夢が早く叶ってしまったのです。
パライバトルマリンが目指すもの
その後、結構な数のパライバトルマリンをお客様にお届けしてきました。
こちらのパライバはなんと20カラットほどあります。
先日これをつけているお客様を見て、別の方から「どうやって仕入れているの?
あなたの仕入れルートってどうなっているの?」と質問されました。
宝石にはとても詳しい方でしたが、その方から「仕入れの力が尋常じゃない」というお褒めの言葉を
いただいてしまったのです。素直にとても嬉しかったです。
その方に「海外富裕層向けの資産になる宝石を扱うべきだ」と言われました。
一瞬、「面白そう」と思ったんですね。
けれどよく考えてみたら、資産としての宝石というのは金庫にしまわれてしまいます。
毎日身につけて意図を込める、なんてことはせず、資産価値があるものとして大切に
保管されてしまう。
これは私のやりたいことではないのです。
私は身につけた方が宝石に意図を込め、その宝石とともに日々の暮らしの中で小さな一歩を歩み続けること。
それによって1年後には全く別の人生になっていた。
そんな姿を見たいのです。
宝石は人が使ってこそ真価を発揮するものです。
金庫にしまわれる石ではなく、アクティブに人と共に生きる宝石を扱いたい。
そしてその宝石が最大限に力を発揮できる所へとお届けしたいと願っていることに
改めて気付かされた出来事になりました。
パライバトルマリンという石
この石は宇宙のスケール感を感じる石。
そして羽のように軽いエネルギーを纏っています。
夢を叶えるのもその軽さを持って最速で叶えてくれるような石だと思っています。
おそらくそれが似合わなかった私は、意識で叶えていくというより現実世界に
どっぷりと浸かり、努力を重ねて夢を叶えていくことを選んで生まれてきたのかも
しれないなんてことを考えて、数年かけてようやく諦めがついてきました。
ですからこの石をお届けする方は、軽やかに、そして人とは違った輝きをご自身に認め
才能を余すことなく(遠慮することなく)発揮していかれることを本来は望んでいる、
そしてそれができる人たちなんだろうと思います。
思い込みや枠を外し、どこまで軽くなれるか。
どこまで自由になれるか。
それを試される石でもあると思います。
石の性質と人の性質。
それぞれに個性がありますが、ご自身に合ったものを身につけて、そこに意図を重ねることで
望む未来に辿り着くための心強い相棒とともにある安心感を体験してほしいなと思っています。
Atsuko Takano