お買い得がある世界
洋服や車、食材などには「お買い得」があります。
ありえない!という値引きもあるし、「本当にお買い得だったね」
というものもたくさん見てきました。
例えば数十万、時に百万円を超えるハイブランドのお洋服は
ファミリーセールになるとものによっては時に9割引になることすらあります。
今はとても高いキャベツですが、たくさん獲れた時は
びっくり価格になることもあるでしょう。
新製品が出て型落ちしたらそれもまた値引きの対象となります。
ちょうど先日、iPhoneを買い替えたい方とお話していて、
最新のを買うと16万以上するけれど、一つ前、さらにもう一つ前の型になると
グッと安くなるからそっちにしようかな、なんてことを言っていました。
ものは需要と供給によって値段が決まるというのは、
ある意味資本主義的な「当たり前」だと思います。
お買い得のない世界
しかし不動産にはそれがありません。
もちろん値段が需要と供給で決まるというのは同じなんですが
「お買い得!!」がないということです。
例えば都内の一等地で、ある程度広さもあるのに9割引だった、
なんてことはありえないでしょう。
もしあり得るとしたらよほどの事故物件か。
「いい時に買った」ということはあるでしょうけれど
同じタイミングでここだけやたら激安だった、
というのは訳あり以外ないと思います。
これは宝石にも通じるところがあります。
この仕事を始めた時、仕入れに行き始め宝石の相場を学んでいた頃の話。
とても美しくて眼を奪われる・・・みたいな宝石はやはり値段を聞いて
「やっぱりね・・・」となります。
反対にお店の人が「それが高くて買えないならこっちはどう??」と
二番手をお勧めしてくれるのですが、やはり二番手でしょうよ・・・
という感覚になったものです。
不動産と宝石というのはお買い得がない世界だと私は思っています。
なぜか?
それは人の手が作ったものではないからです。
土地も宝石も私たちが作り出せるものではありません。
埋立地や山を削って開発などという話ではないですよ。
地球が生み出したものであるという意味です。
過剰生産もないし、追加生産もできません。
そうしたものの世界には「お買い得」はないのです。
不動産も今は高騰していますが、それでも
「この土地・このエリア」によっての価格には
崩せないルールが存在します。
宝石も、例えば非加熱の天然ルビー、色も素晴らしく、
インクルージョン(内包物)もほとんどない透明度だとしたら
それは決して値下げされることなく取引されることでしょう。
なぜならば代わりがないからです。
唯一無二の価値をもっているからなのです。
宝石ができるまで
宝石というのはさまざまな生成の仕方をします。
例えばダイヤモンドはマントルからできます。
マントルが地表に噴出する途中でダイヤモンドも一緒に
捕獲しながら地表に上がってきます。
噴出のスピードは光速。それより遅いとダイヤモンドは
鉛筆の芯と同じ硬度になってしまいます。

またちょっと面白いのがエメラルド。
エメラルドは通常、火成岩が起源です。
マグマが上昇していく段階で地表に出ず、
地下でゆっくりと冷却されながらできていくんですね。
しかしコロンビア産のエメラルドだけは変成岩によって形成されます。
これは岩石が互いに押し合って(例えば造山活動でプレートが動くなど)、
その圧力によって変成作用が生じて化学変化を起こします。

ですからコロンビア産のエメラルドには特有のインクルージョンが存在します。

こちらがコロンビア産の三相インクルージョン。
丸が気体、四角が固体、三角は液体です。
コロンビア産に限らず、エメラルドはインクルージョンが
多い石としても有名であり、むしろインクルージョンがあることが
天然の証とも言われています。
コレクターの中にはこのインクルージョンの様子を見て
好みのものを集める方もいるそう。
ただ、ザンビア産のエメラルドはインクルージョンが少なく
青みがかったものが多いのです。
これこそが形成される環境の違いであり、含有物の違いであるわけです。
通常エメラルドの着色元素はクロムですが、一部の石には
バナジウムが含まれておりこれが青みの原因となります。
一言でエメラルドと言っても全く違ったエネルギーを持つのも納得ですね。
そしてこれも数万年、数億年のお話。
どんなに長生きしても100年程度で亡くなる人間とは
全然違った時間の流れを持った地球の大先輩と言えるでしょう。
また有機物として生物が生成に関わったものも宝石として使われます。
例えばこはくは化石化した植物の樹脂です。
樹皮から滲み出た樹脂が堆積して変化したものです。
樹脂には粘着性があるため小さな昆虫が中に入っているこはくもありますね。
宝石質のこはくができるために要する時間は1500万年から4000万年。
なんとも気が遠くなるお話です。
これだけの時間をかけて出来上がるわけですから、
人間がどうこうできるものではありません。
もちろん、合成の石を作ることは可能でも天然は無理ですね。
その「時間」に何を見出すか
私は宝石はそれだけの時間をかけて地球の・その土地のエネルギーを
貯めに貯めて濃縮されたものだと捉えています。
小さな面積でも、身につけるとその人のオーラが変わるなんてことは
ザラにある話ですが、この形成までの歴史を考えると
当然でもあると思いませんか?
地球という星は本当に豊かな星だと思います。
水があり空気があり海があり山があるからこそできあがる宝石。
宝石の勉強をすればするほど、地球に対する敬意が湧いてきます。
そしてSDGSの最先端が宝石でもあるでしょう。
親から子へ、子から孫へ。
それが叶うのも宝石だから。
代々伝わる宝石、というのもありますよね。
そしてなんと言っても場所を取らない。これが最高。
意外と費用対効果は抜群だと思うんですよね(笑)。
時間を刻んだ宝石という宝物。
あなたはそこに何を込めますか?
やっぱり宝石をただの宝飾品として使うだけではもったいないだけでなく
宝石に対して失礼ではないか?なんてことを常々考えています。
彼らのエネルギーをたっぷりと受け取りましょう。
そのために彼らが経てきた悠久の時に思いを馳せてみてください。
Atuko Takano